外出自粛ムードが漂うこの世の中において、飲食店が生き残るためにはデリバリーサービスがもはや必要不可欠です。
昔は店員が店から料理を直送する「出前」が主流でしたが、運送業者に配送を受託する「デリバリー」だと、本業に集中して他のサービス向上に費やすことができるというメリットがあります。
様々なフードデリバリーを耳にしますが、その中でもとりわけ名前が挙がるのがウーバーイーツ。
ウーバーイーツの特性をこの記事できちんと理解して、改めて自分の店に必要かどうか考えてみてくださいね。
コロナ禍におけるウーバーイーツ導入の意義を普及率から分析
ウーバーイーツを導入すべきかの判断材料の一つとして、新型コロナウイルス拡大以降どのくらい普及しているのかについて注目してみましょう。
利用者が多ければその分サービスへの信頼もお店の売り上げ効果への期待も高まりますからね。
ここでは、ウーバーイーツ日本代表の方へのインタビュー記事をまとめてみました。
引用⇒2020.08.04の東洋経済オンライン記事:https://toyokeizai.net/articles/-/366363
- 2016年9月に事業をスタートしてからわずか3年で提携店舗数を1万4千店に拡大し、ついに最近はその2倍以上の3万店に到達
- 当初は20代後半~30代前半の若い層で、一人暮らしやネットに慣れている方々がメインの利用者だったが、認知度が高まったことで利用者層も急速に拡大
- ホームパーティーが流行り、大人数向けのメニューを注文する利用者が増えたことから、1回あたりの注文金額が気持ち高めに
こうして見ると、コロナの影響を受けて生活に様々な変化が生じるに伴って、ウーバーイーツをはじめとするフードデリバリー産業の需要はますます伸びるばかりのようです。
ウーバーイーツのメリット3点
ではまず、ウーバーイーツを導入することで店舗にどんな経済効果が見込めるかハッキリ理解しましょう。
①新規顧客獲得のチャンス
最初に利用者はお届け先を入力してからお店を選ぶため、お届け可能な範囲にあるお店を一望できます。
その店の一覧から、お客様が近所だったのに気付かなかったお店を知る機会になったり、普段行くには微妙な距離にあるお客様から注文を受ける可能性があるというわけです。
加えてウーバーイーツで検索できる料理のジャンルは非常に豊富なので、食べたい料理からたまたまあなたの店を知ってもらえるかもしれません。

また、ウーバーイーツの特徴の一つに「最低注文価格が決められていない」という点があります。
このシステムのおかげで、一人分だけ注文したいお客様も気軽にオーダーすることができるのです。
②配達のためのコストを削減

自分たちで配達まで行うとなると、配達員や移動手段(バイク、自転車)の準備も考えなければなりません。
ところがウーバーイーツならその心配は無用です。
ウーバーイーツは配達スタッフと飲食店をマッチングさせるためのサービスなので、常に人手不足に悩まされる必要はなくなります。
デリバリーサービスを展開するにあたって直接目に見えて必要な費用はもちろんですが、デリバリーを始めたことの告知方法やそれにかかる費用もまた考えないといけないですよね。
しかし、ウーバーイーツと提携さえしてしまえば、集客も販促も受注も全てウーバーイーツが管理してくれます。
③決済が楽チン

売上の獲得方法は、一度Uberが徴収代行したものから諸経費を差し引いた金額が指定口座へ振込まれるという、至ってシンプルなもの。
管理ページやメールにて支払の詳細を確認することもできます。
自営の場合、現金にせよキャッシュレスにせよ金銭の管理やそのシステムを導入するための準備に手間取ることでしょう。
お客様にとっても、先払いでサッと商品を受け取るだけで済むので、非常にストレスフリーです。
ウーバーイーツのデメリット3点
しかし、物事においておいしい話だけということはあり得ません。
ここでは、ウーバーイーツを導入することによって新たに発生する注意ポイントをまとめてみました。
これらを最低意識するだけでも、冷静に店の経営方針を見つめ直す良い機会になるのではないでしょうか。
①35%という高めの手数料

ウーバーイーツに加入する飲食店は、ウーバーイーツに対して支払う売上総額(配達員の手数料込み)の手数料(約35%)プラス原価(約30〜40%)の他に、包装材費(約7〜10%)、場合によっては増える人件費がかかるでしょう。
その点を考慮すると、実質残る利益は売上の約25〜30%だと考えるべきです。
さらにこの手数料は、天候や受付時間の頻繁な変更といった様々な条件により変動します。
ここで店側が工夫できるポイントとしては、原価率が高過ぎる食材は使用しない、店頭価格よりも割高に価格を設定する、などが挙げられます。
特に原価率に関しては場合によっては赤字になる恐れがあるので、ウーバーイーツを導入するうえでメニュー設定には充分注意してください。
購入者側も店に足を運ぶ手間がかからないことを引き換えに多少の値段の高騰は受け入れますが、あまりにも店頭価格とかけ離れ過ぎると買う意欲が下がるので、悩ましいところです。
②配達員の教育ができない

ウーバーイーツにおける配達員はほとんどの一般人が簡単に仕事をスタートできるので、良くも悪くも自由です。
それは、ウーバーイーツの配達員は雇われているのではなく、ウーバーと契約する個人事業主という立場となっている所以にあります。
普通の外食企業であればアルバイトの配達員といえどもきちんと教育がなされるところですが、人によってはせっかく作った料理を雑に扱われてしまう恐れがあるのです。
いくら飲食店とウーバーイーツの配達員はそのとき限りの関係であるとしても、利用者からすればたった一度の配達側の不手際で店の印象まで悪くなりかねません。
③包装コストの心配

ウーバーイーツの役目は代わりにお客様のもとに料理を届けることであり、容器や食器などは店側が自分で用意する必要があります。
”運ばれる”料理であることを意識して、「冷めにくいように」「ズレにくいように」「持ったときに火傷しないように」「かさばらないように」…など様々な視点から容器や食器の素材選びにこだわりましょう。
味やサービスと同様に、お客様の気持ちにどこまで寄り添えるかが重要にはなりますが、高級であまり手に入りにくい素材を包材に選んでしまったらあっという間に経営が追い付かなくなるので、その辺のコントロールには気を付けなければなりません。
また、そのような包材を保管しておくスペースの確保もお忘れなく。
ウーバーイーツ導入の成功と失敗の分かれ道はどこ?
メリットとデメリットの両方を理解したところで、ではウーバーイーツが経営立て直しの切り札になるか、それとも落とし穴になるかは何によって決まるのでしょうか?
①メニュー設定は慎重に

ウーバーイーツ営業部門日本代表は、これまでのデータ統計を踏まえて、メイン・サイドメニュー・ドリンク・デザートなど全てのメニュー分野トータルで15品以上は提供しておいた方が良いとアドバイスしています。(参照⇒https://www.kikkoman.co.jp/gyoumuyou/special/post0012/index.html)
また、そのメニューもできるだけ品切れの心配が無いものがおすすめです。
豊富なメニューが取り揃えてあり、できるだけいつでも好きな料理を注文できる店の方が人気は集まります。
とりわけ材料の原価やメニューの価格設定は、後から値引きされる額を考慮しつつも顧客が手を出しやすいよう、適切な値段を考えましょう。
②プロモーションを活用

プロモーションによって期待できる効果は、お得感をアピールすることです。
ウーバーイーツの加盟店が設定できるプロモーションは、以下の3種類がメインとなっています。
- 利用金額に応じた割引『○○〇円以上ならXX%OFF』
- 配送料が無料もしくは減額
- BOGO『1つ買うともう1つ無料』
なお、プロモーションの実施にあたってウーバーイーツに追加費用を払う必要はありません。
売り出したいタイミング・メニューをしっかりと見極め、効果的にプロモーションを組み合わせて販売することで、売上向上を図ることができます。
③集客メゾットをウーバー側に頼りっぱなしはNG

デリバリーにまつわる様々なサービスをウーバーイーツが請け負ってくれる代わりに、店舗側は細かな顧客データを得ることができません。
これは、リピーター獲得に大きく影響します。
ウーバー内の検索機能で自店が表示される順番だったり、先述したような配送スタッフの対応などによって店の評価が大幅に左右されるのは大変危険です。
「ウーバーイーツはあくまで商業手段の一つ」という認識で、味以外のアプローチからもお店を気に入ってもらう方法を考えなければなりません。
具体案としては、
- 複数のオンラインデリバリーサービスを利用する
- 料理名や店名で直接検索してもらえるようなブランド化を目指す
などが挙げられます。
ウーバーイーツを上手く活用している事例3選
ある程度ウーバーイーツの仕組みを理解してきたところで、実際に成功している店舗を紹介しましょう。
何事も初心者はまずまねごとから。
これからウーバーイーツを自店に導入するか検討中の方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
①デイアンドナイト - 東京/広尾

白金にあるハンドメイドサンドイッチ店「デイアンドナイト」は、ウーバーイーツの手数料を踏まえた工夫をしています。
それは、価格を上げるのではなく提供するメニュー内容を変えるという点です。
具体的には、イートイン以外では通常のサンドイッチプレートからサラダを抜いて、持ち帰りは200円引き、宅配は標準価格で販売、といった具合です。
また、価格の調整だけでなく、上の写真のように包装紙にワックス紙を使用することで、ストック場所を最小限に収めています。
このような工夫の結果、現在店の売上の30%ほどはウーバーイーツによるものだそうです。
店の公式HP⇒http://www.dayandnight2015.com
②京のねぎ屋 - 東京/自由が丘・五反田・中野・蒲田
株式会社YO Plusは、「京のねぎ屋」を中心にバーチャルレストランの運営に成功しています。
必要な場所は厨房だけなので、家賃・人件費・出店費用を大幅にカットできたのです。
各店舗に専用端末が置かれ、画面で注文を知らせます。
配達員やお客様とのやり取りも基本的にディスプレイ上で行われます。

なお、上図の料理全て、ある程度生地ベースを用意しておき、注文がきたら焼く・沸かすなどの一工程で済むように調理法を工夫しています。
完全にバーチャルレストランに舵を切らなくても、実店舗はある状態でオンライン専用の新店舗を始めてみるという手もあるかもしれません。
店の公式HP⇒https://negifeti.jp/#pop
③タピオカ TOKYO NO.1 茶房 - 東京/池袋
池袋駅近くにタピオカドリンクを専門に扱う路面店をオープンし、今年2020年で2年目。
オープンとほぼ同時期にウーバーイーツと提携したにもかかわらず、ウーバーイーツ内でお客様からの高評価と長期にわたる実績を褒め称える「Eats厳選」に、驚くべきスピードで選ばれるほどのお墨付きです。
こちらのタピオカショップはタイ産茶葉や自家製果実たっぷりの特別なソースを使ったオリジナルドリンクを売りにしており、そのことがウーバーイーツユーザーにも初見で伝わるようにメニュータイトルには「人気No.1!!」と付けています。
メニュータイトルには、「季節」や「おすすめ」などのワードを付けると注文数増加に繋がりやすいそうです。
また、ウーバーイーツのメインユーザーはネットに長けた20~30代が多いという点を利用し、利用者の層が被るSNSにもアカウントを作ってうまく連携させていくとお客様の拡散投稿によってさらなる新規層の増加が見込めます。
①デイアンドナイト、②京のねぎ屋の参照記事⇒https://r-tsushin.com/feature/movement/ubereats.html
③タピオカ東京No.1茶房の参照記事⇒https://delitre.com/tokyo-no1sabo/
まとめ
いかがだったでしょうか?
フードデリバリーを導入するにせよしないにせよ、明日どう変わっているかわからない今日においては環境に柔軟に対応できる者が最終的に生き残ると思います。
固定概念にとらわれず、常にお客様の声に耳を傾けて需要と供給を理解した経営に取り組みましょう。
その手段の一つとしてウーバーイーツを始めるかどうかを決めるのは、あなた次第です。
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